株式会社みんなのみらい計画

絵本を楽しもう! vol.12

絵本

「おつきさまこんばんは」

(林明子さく 福音館書店)

 

 林明子さんの福音館あかちゃんの絵本「くつくつあるけのほん」全4冊のうちの1冊として1986年に出版されました。もう30年以上愛され続けています。

 まず表紙から見てみましょう。濃い紺色の背景に、黄色い輪郭の大きなまん丸お月さま。そこに目を閉じた、オレンジのほっぺと鼻の、赤ちゃんのような寝顔がリアルに描かれています。そしてタイトルが手書きのような白抜きの文字で、お月さまの上に並べられ、右下に「林明子さく」と小さく墨文字で、まるで目立たせないように置かれているのです。

 表紙を開き、もう一度タイトルが書かれているページを「扉」と言います。普通、ここには作者名と出版社名も入れられているのですが、この絵本ではそれも省略されています。夕闇を表す、表紙よりくすんだ紺色を背景に、白抜きのタイトルと三角屋根の家のシルエット。窓にはまだ明かりが灯っていません。屋根に寝そべる猫の姿と左ページにもう一匹の猫。もう物語は始まっています。

 次のページで夜を迎えます。背景の空は黒に近い紺。窓に明かりが点き、暖か味を与えてくれます。そしていよいよお月さまの登場ですが、その表情の変化と月を見上げる2匹の猫の後ろ姿のシルエットに注目。文章は猫たちが語っているようでもあります。最後はお月さまの満面の笑顔。思わず赤ちゃんもにっこり。裏表紙の舌を出しているお月さまも見せてあげてください。この絵であかんべえを覚えた赤ちゃんも多いはず。やはり文字は墨で読めないくらい。シリーズの他の3冊と比べてみてもわかります。赤ちゃんは絵に集中でき、お月さまとアイコンタクトがとれるのです。おやすみ前に最適な絵本の1冊。

(文・吉井康文/こぐま社前社長)

絵本